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自衛隊の階級
ご存知の方も多いかと思いますが、自衛隊は階級社会です。この階級によって役職や責任度合い、定年退官の年齢、給料なども大きく異なります。大きく分けると、幹部と曹士に分かれるのですが、さらに細かく見ると16階級に分かれます。
階級は陸海空でほとんど同じですが、階級章は陸海空でそれぞれ異なります。
共通呼称 | 階級章・呼称 | 定年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
陸上自衛隊 | 海上自衛隊 | 航空自衛隊 | ||||
幹部 | 将官 | 統合幕僚長 | 陸上幕僚長 |
海上幕僚長 |
航空幕僚長 |
62 |
幕僚長 | 60 | |||||
将 | 陸将 |
海将 |
空将 |
|||
将補 | 陸将補 |
海将補 |
空将補 |
|||
佐官 | 1佐 | 1等陸佐 |
1等海佐 |
1等空佐 |
56 | |
2佐 | 2等陸佐 |
2等海佐 |
2等空佐 |
55 | ||
3佐 | 3等陸佐 |
3等海佐 |
3等空佐 |
|||
尉官 | 1尉 | 1等陸尉 |
1等海尉 |
1等空尉 |
54 | |
2尉 | 2等陸尉 |
2等海尉 |
2等空尉 |
|||
3尉 | 3等陸尉 |
3等海尉 |
3等空尉 |
|||
准尉 | 准陸尉 |
准海尉 |
准空尉 |
|||
曹士 | 曹 | 曹長 | 陸曹長 |
海曹長 |
空曹長 |
|
1曹 | 1等陸曹 |
1等海曹 |
1等空曹 |
|||
2曹 | 2等陸曹 |
2等海曹 |
2等空曹 |
53 | ||
3曹 | 3等陸曹 |
3等海曹 |
3等空曹 |
|||
士 | 士長 | 陸士長 |
海士長 |
空士長 |
– | |
1士 | 1等陸士 |
1等海士 |
1等空士 |
– | ||
2士 | 2等陸士 |
2等海士 |
2等空士 |
– |
3士 (旧自衛隊生徒) 現在、階級はありません |
3等陸士 |
3等海士 |
3等空士 |
– |
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以上が自衛官の全階級となります。
各階級の職務について
幕僚長
陸海空自衛官のトップにあたる役職が幕僚長なのですが、6年間の自衛隊生活の中で実際にお会いしたことはないくらい雲の上のような存在の方です。幕僚長には、陸海空、全自衛隊を統括する統合幕僚長、陸上自衛隊を統括する陸上幕僚長(陸幕長)、海上自衛隊を統括する海上幕僚長(海幕長)、航空自衛隊を統括する航空幕僚長(空幕長)の計4名が該当します。
統合幕僚長
統合幕僚長は統合幕僚監部の長であり、陸海空自衛官の最高位者です。外国軍の統合参謀総長あるいは国軍参謀総長に相当し、陸海空の自衛隊の運用に関し一元的に防衛大臣を補佐し、統合幕僚監部の所掌事務に係る大臣の指揮命令は、全て統合幕僚長を通じて行います。
陸上幕僚長
陸上幕僚長は陸上幕僚監部の長であり、陸上自衛官の最上位者です。外国軍の陸軍参謀総長に相当、防衛大臣の指揮監督の下、陸上自衛隊の任務および隊員の服務を監督し、それらに関する最高の専門的助言者として大臣を補佐します。
海上幕僚長
海上幕僚長は海上幕僚監部の長であり、海上自衛官の最高位者です。外国軍の海軍参謀総長ないし、軍令部総長に相当し、防衛大臣の指揮監督の下、海上自衛隊の任務および隊員の服務を監督し、それらに関する最高の専門的助言者として大臣を補佐します。
- 統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)は、防衛大臣の指揮監督を受け、それぞれ隊務及び統合幕僚監部、陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の隊員の服務を監督する。(自衛隊法第9条第1項)
- 幕僚長は、それぞれ、隊務に関し最高の専門的助言者として防衛大臣を補佐する。(自衛隊法第9条第2項)
- 幕僚長は、それぞれ、隊務に関し、部隊等に対する防衛大臣の命令を執行する。(自衛隊法第9条第3項)
- 幕僚長は、防衛大臣の指揮監督を受け、幕僚監部の事務を掌理する。(防衛省設置法第21条第3項)
将・将補
各幕僚長も法律的には将に該当するのですが、階級章も異なり事実上は別の階級として扱われているので、ここでは幕僚長以外の将と将補についてお話します。将や将補も雲の上のような存在で曹士が直接お話をする機会は皆無ですが、各方面隊の方面総監や防衛省直轄の学校の学校長が将や将補なので、幕僚長よりは目にすることが多い階級だと思います。
ちなみに、私の母校でもある少年工科学校(現、高等工科学校)の学校長は陸将補でした。
将
方面隊、師団、護衛艦隊、地方総監、航空方面隊などの非常に大きな組織を指揮・統率。陸海空自衛隊それぞれに約20名ほど存在します。
陸将は、陸上幕僚副長、方面総監、中央即応集団司令官、師団長、陸上自衛隊幹部学校長、陸上自衛隊富士学校長、補給統制本部長、陸上自衛隊研究本部長などの役職に就きます。
海将は、海上幕僚副長、自衛艦隊司令官、護衛艦隊司令官、潜水艦隊司令官、航空集団司令官、教育航空集団司令官、地方総監などの役職に就きます。
空将は、航空幕僚副長、航空総隊司令官、航空総隊副司令官、航空方面隊司令官、航空支援集団司令官、航空教育集団司令官、航空開発実験集団司令官などの役職に就きます。
将補
旅団、団、護衛隊群、航空団などの大きな組織を指揮・統率、もしくは上級の司令部で幕僚としてトップを補佐。将補は、役職に応じて以下の2種類に分類されます。
組織 | 将補(一) | 将補(二) |
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防衛省付置機関 | 防衛研究所副所長 | 防衛大学校訓練部長 防衛学教育学群長 防衛学教育学群統率・戦史教育室長 防衛監察本部監察官 情報本部情報官(3名の自衛官のうちの一人) 米国首席防衛駐在官(肩書きは「外務事務官兼○将補」) |
統合幕僚監部 | 統合幕僚監部総務部長 防衛計画部長 |
統合幕僚監部指揮通信システム部長 報道官 首席後方補給官 統合幕僚監部運用部 防衛計画部副部長 自衛隊情報保全隊司令 |
陸上幕僚監部 | 陸上幕僚監部防衛部長 人事部長 教育訓練部長 装備計画部長 方面総監部幕僚長 旅団長 自衛隊福岡病院長 |
陸上幕僚監部監理部長 運用支援・情報部長 衛生部長 陸上幕僚監部監察官 法務官 方面総監部幕僚副長 副師団長 中央即応集団副司令官 団長(方面混成団長を除く) 警務隊長 中央情報隊長 中央業務支援隊長 中央会計隊長 各職種学校長(幹部・富士学校長を除く) 自衛隊体育学校長 陸上自衛隊幹部候補生学校長 陸上自衛隊高等工科学校長 幹部・富士・小平学校副校長 富士学校普通科、特科、機甲科部長 補給統制本部副本部長 補給処長(関東補給処長を除く) 研究本部幹事・総合研究部長 自衛隊東京・大阪・沖縄地方協力本部長 自衛隊仙台・熊本・阪神病院長 自衛隊中央病院第1歯科部長 |
海上幕僚監部 | 海上幕僚監部人事教育部長 防衛部長 装備計画部長 掃海隊群司令 自衛艦隊司令部幕僚長 横須賀・佐世保地方総監部幕僚長 海上自衛隊第1術科学校長 自衛隊横須賀病院長 |
海上幕僚監部総務部長 同副部長 指揮通信情報部長 首席衛生官 大湊・呉・舞鶴地方総監部幕僚長 護衛艦隊司令部幕僚長 航空集団幕僚長 護衛隊群司令 航空群司令 海洋業務・対潜支援群司令 阪神基地隊司令 練習艦隊司令官 開発隊群司令 潜水医学実験隊司令 海上自衛隊補給本部副本部長 海上自衛隊幹部学校副校長 海上自衛隊幹部候補生学校長 術科学校長(第1術科学校長を除く) |
航空幕僚監部 | 航空幕僚監部人事教育部長 防衛部長 装備計画部長 航空支援集団副司令官 航空教育集団司令部幕僚長 航空救難団司令 航空自衛隊補給本部副本部長 自衛隊岐阜病院長 |
航空幕僚監部総務部長 運用支援・情報部長 監理監察官 首席衛生官 航空総隊司令部幕僚長・同防衛部長 航空方面隊副司令官 南西航空混成団副司令 航空戦術教導団司令 航空団司令・航空警戒管制団司令 航空安全管理隊司令 航空医学実験隊司令 第1輸送航空隊司令 航空自衛隊幹部学校副校長 航空自衛隊幹部候補生学校長 各術科学校長 各補給処長 |
佐官
3佐から1佐までの階級が佐官なのですが、この辺の階級は比較的身近な幹部になるので直接話す機会もあります。一般に連隊長や群長の役職に就く方のほとんどが1佐です。細かく分けると1佐はさらに3つに分類することができます。
1佐(一) | 1佐(二) | 1佐(三) |
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陸上幕僚監部の課長 方面総監部の人事・情報・防衛・装備部長 師団幕僚長 副旅団長 方面直轄部隊長及び副師団長や将補(二)職の部隊長 など |
旅団幕僚長 師団普通科連隊長・特科連隊(隊)・戦車連隊長 第1戦車群長 など |
師団(旅団)司令部第3部長等 旅団普通科連隊長 特科・後方支援隊長 第12ヘリコプター隊長等旅団隷下の1佐職の部隊長 など |
尉官
ここからは最も身近な存在となる幹部自衛官でしょう。小隊長や中隊長などは直属のトップですので毎日のように顔を合わせるでしょう。私が現職のころは航空科部隊だったので、ヘリパイが多く1尉はゴロゴロいました。
防衛大学校出身者や一般大卒の幹部候補生課程などで入隊すると、教育期間が終わると3尉からのスタートとなるので、いろいろと苦労することもあるようです。
准尉
幹部なのか曹なのかよくわからない階級として認識されている准尉ですが、立場的には曹(現場)の最上位者として部隊の補佐をするというイメージでした。
曹
おそらく全自衛隊の中でも一番多いのが曹階級ではないかと思います。また、3曹以上になると一般会社でいう本雇いとなります。曹になると班長として士長以下を指揮して勤務します。
その後、早い人だと最短4年で2曹になりますが、遅い人だと10年以上かかってしまう隊員もいます。
また、30歳以上の2曹になると既婚・独身に関係なく営外に家を持つことができます。
士
自衛隊に入隊して最初に任命される階級が2士です。自衛官の中では最下級の階級です。入隊方法によっても異なりますが、一定期間が経過すると1士へと昇任します。
さらに一定期間が経過すると士長へ昇任します。士長までは試験や必須教育なども特にないので、自衛隊を続けていれば誰でもなることができる階級です。とはいえ、士階級は部隊では下っ端階級なので主な任務は雑用が多いです。
士長までいくと、任期制隊員なら、このまま自衛官を続けていくのか、退職するのかを決断しなければいけません。自衛隊を続けていくなら曹になるために曹候補生試験に合格しなければなりません。
私は生徒として入隊したので、曹候補生試験を受けたわけではないので、どの程度の難関なのか分かりませんが、この試験に受かるのは難しいようで、何回受けても不合格という人も珍しくありません。
とはいえ、一般会社の就職試験に比べるとそれほど難しくはないでしょうから、本気で曹になりたいのであれば、それなりに勉強するでしょうし、分隊教錬の練習も部隊で時間を作ってくれるので、真面目にやっているのに何回も何回も不合格になるということはないでしょう。
私が何人かみてきた中で毎回不合格になるのは、勉強もしない、分隊教錬もまともに練習しない、ような隊員ばかりでしたので、しっかりやれば必ず合格できる試験です。
とはいえ、定員の関係もあるので、一発合格するのは少し難しいかもしれませんが、中には一発合格する隊員もいますし、自衛官として続けていきたいのであれば、必ず合格しないといけない試験なので、しっかり勉強しておきましょう。
以上、自衛隊の階級一覧とその職務 終わり